奈良、徳島から山口・ワイカムシネマ、シネマ尾道へ。上映会場、上映館はすべて満席!
おかげさまで、全国41館の劇場で上映していただけることが決まり、7月は最も上映が相次ぐ月になりました。上映館のない地域では自主上映会が始まり、舞台挨拶・アフタートークも地域を移動しながら連続開催。果たして、すべてを無事に乗り切れるか、私にとっては正念場でもありました。
7月6日、奈良宇陀市へ出発。名古屋を経由して近鉄を乗り継ぎ、気持ち良い山々に囲まれたところに着きました。
自主上映会が開催されたのは「Hi Studio もとたねしゃ」。写真家・木下伊織さんの「『美しき大地の再生』写真展」と同時開催されました。
7月7日の上映会&トークには、地域の方を中心に京都からいらした方もあり、トーク後の質疑応答では地域の子育てを含む環境についての熱い意見も。地域で子どもたちを育てていくかつての結を感じました。
この日の朝には、近くにある「龍鎮神社」にも案内してもらいました。水音が心地よく響く中、数分歩くと、自然が彫刻した見事な水脈と点穴に目を見張りました。
その後、大阪で高速バスに乗り継ぎ、一路徳島へ。視界が開け、海が眼前に広がると空の風景もダイナミックに変化し、光の粒がグッと輝きを増します。
徳島駅で待っていてくださったのは、チラシのデザインを手がけてくださった山下リサさんと主催である「コープ自然派しこく」の中西真夕さん。美味しい居酒屋で食事をして、真夕さんが始められたばかりのゲストハウスで一泊。
実は翌朝、生まれて初めての目眩(?)に襲われました。猛暑の移動のせいか、着いた瞬間生ビールを飲んだのが悪かったのか……。頭の芯が定まらなかったのですが、熱はなく、午前中は休ませてもらって、なんとか上映会場に向かう車の中で立て直しました。そして、いざという時のためにスタンバイしてくれていた「森の学校みっけ」主宰の「らんぼう」こと上田直樹さんに久しぶりに再会。お二人に助けられて、無事にトークが終わった時は本当にほっとしました。
文化の森ミニシアターは満席。そして、ここで「大地の再生四国支部」発足宣言がなされたのでした。
思えば、徳島で体調を壊したことは、頼れる方々がいらっしゃる場所だったからだろうと後から思いました。私ひとりのトークだったら、どれほど大変だったことか。リサさん、真夕さん、らんぼうという強力な布陣があって、「いざという時はなんとかしますから大丈夫!」と仰っていただけたことが何より効く安定剤になった気がします。
7月9日。実家から姉の車で向かったのは山口情報芸術センター[YCAM]。10時の開館前に到着すると、すでに長蛇の列が。見ると、高校の同級生。「地元なので、友達もいっぱい観に来てくれるはずです!」と上映のお願いをしたものの、正直どのくらい来てもらえるのか、不安がありました。でも、持つべきものは同級生、怒濤の勢いでチラシを撒いてくれたおかげで、なんと100席が満席、補助席も出してもらうことに。
山口は「地元スペシャル」ということで、父が90歳の時に撮った短編(といっても、アップリンク主催ムービー制作ワークショップの修了制作)「100歳に向かって走れ」(2018)を同時上映してもらったのですが、私にとっては緊張の連続でもありました。
94歳になった父が黙って最後まで観られるのか、途中でいびきかいて眠り込んだりしないか、88歳の母は腰が痛くならないか、トイレは大丈夫だろうか……。
そんな心配は杞憂に終わり、二人は2本立て2時間、最後までちゃんと観てくれました。さすがに40分近いトークは長かったらしく、我慢できずにトイレに立った父でしたが、終了後は「元気をもらいました!」と女性陣に囲まれ、人生最大のモテ期が襲来したのでした。
7月10日はシネマ尾道へ。
真夏の日差しが降り注ぐ中、歴史ある映画館で、「教育と愛国」「スープとイデオロギー」という名監督のドキュメンタリーと並んでかけてもらえるという栄誉に預かり、さらに120席ある客席は満席。
2018年7月、西日本豪雨で被災した広島で上映してもらえることには大きな意味がありました。
一緒に登壇した下村京子さんは、矢野さんの「被災現場に入りたい」という申し出を、ボランティア・コーディネーターをされていた松田久輝さんと繋いでくださった大地の再生のメンバー。炎天下、十数日間現地に泊まり込んで被災地支援をされる姿は深く胸に刻まれていました。
「おとめちゃん」こと上村匡司さんは京都で造園をされていたのですが、大地の再生に出会って、下村さんと「上下コンビ」を結成、中国地方から九州、そして四国まで年間を通して大地の再生の旅を続けられています。
兼田汰知さんは西日本豪雨でご自宅が被災、土砂で家財道具が流されました。
「被災してわかりました。人間、何があっても大丈夫なんです」という言葉には、お金のためでなく、子どもたちが生きていく未来のために、大地に呼吸を促し続ける覚悟が漲っていました。
この日のトークの詳細はこちら。
翌11日は編集段階で的確なアドバイスをくださった尾道在住の映画監督、田中トシノリさん(「スーパーローカルヒーロー」「RESONANCE ひびきあうせかい」)、そして珈琲屋さんや農業に加えて「ジャイビーム!」というスーパーパワフルな映画を撮られた竹本泰広さんと登壇しました。
3人に共通するのは、衝撃的な人物との出逢いが映画を撮らせたこと。そこにあるのは「この人、すっげェ!」という感動を「共有したい!」という初期衝動のみ。その人を特別な人として紹介するのでなく、みんなの中にある想い・力に共振・共鳴させたかったことだと話をしながら思いました。
奈良から始まった西日本の旅は、「ヤドカーリ」というアジト、もといゲストハウスで一層ディープなものとなりました。
さて、この後、旅は東日本(福島、山形)へと続きます。そして、浜松の奇跡へ。つづく!
2022.7.20 前田せつ子