「みんなの庭」に行ってきました!

以前から、水はけが悪い園庭を改善している話を「やっちゃん」こと松下泰子さん(大地の再生たむたむ支部)から聞いていました。

コンクリートに囲まれた街の中心部にあり、植物も育たず、雨の日は水たまりだらけになってしまう子どもたちの庭。

いきなり重機が入るのをためらう園長先生らの想いもあって、まずは手作業を2年近く進めてきたけれど、根本的な改善にはやはり重機も入れた作業が必要。

その費用を賄うためにクラウド•ファンディング(CF)への挑戦を考えていると。

折しも、先の投稿でお伝えした「樹木(いのち)の緊急避難プロジェクト」から1週間後、浦堂認定こども園 みんなの庭プロジェクト〜「大地の再生」とともに〜がスタート。重なるように「公益」、とくに「子どもたちの未来」のためのプロジェクトが二つ、同時期に始まることになりました。

当初、二つを同時にアナウンスすることには少なからず抵抗がありました。貴重なご支援を、あっちもこっちも、と呼びかけることが憚られたからです。でも、実際に園を訪れて、迷いが消えました。どちらもそこに私益はなく、自分を勘定に入れない「いのち」そのものへの想いを、具体的なお金というカタチに載せていただくことを願うもの。そんな「いのちの循環」を促す経済が生まれることを願うプロジェクトが成功することが、多くのひとりを励まし、未来に希望をともすと感じたからです。

屋上から見ると流線形の水脈がくっきりと

5月28日、大阪の高槻市にある浦堂認定こども園を訪れると、やっちゃん率いる大地の再生たむたむ支部のメンバーと多くのボランティアさん、そして、小さなユンボに乗って水脈を掘っている矢野智徳さんの姿がありました。

これは整地作業

日本全国(たぶん、海外でも)どこへ行ってもやることは同じ。水脈を掘り、点穴をあけ、炭と竹(コルゲート管)、枝葉とチップ、粗腐葉土などの有機材で、大地がラクに呼吸できる環境を取り戻すこと。

詰まりやすい現場で水脈を確保・維持するのに必要なコルゲート管

その園庭でも同じことが行われていましたが、園長の濱崎心子さんらにとっては、園庭を重機が動き回るのは初めての経験。保護者の方への説明含め心配事はさまざまあったと思います。でも、これまでの手作業で少しずつよくなってきているのを体感していること、矢野さんの見立てで治療が必要な理由が腑に落ちていることから、どんな要請もどーんと受け止め、柔軟に対応されていました。

作業は参加者同士の息が合うことが何より大切

この園が保育で大事にしているものと、「大地の再生」が大事にしているものとが一致していることも大きいのでしょう。

子どもたちは、こんなに遊んでばかりでいいの?というくらい毎日遊ぶそうです
卒園する子からのプレゼント
気がつくと近所の子どもたちがやってきて作業のそばで遊び始めていました

1日目の作業を見ることはできませんでしたが、職人さんよりも素人のほうが多い2日間の作業を終えて、矢野さんは言いました。

「腕のいい職人さんだけが集まってもこの作業は終わらなかった。2日間で園全体の『脈』が通ったのは、初めての人含めてごちゃ混ぜの、このメンバーだったから。凄いことが起こったんです」

一日の作業を終えた後は必ずそれぞれの想いをシェアし、深める
保育の先生方も参加されていました

見渡せば、本当にバラバラ。こういう作業は初めてという保育士さんから、千葉から大地の再生を体験したくて飛んできた女性、友人に連れてこられた方、建築士さん……。造園技師の方はごく少数。

現場をまとめたやっちゃんは、元小学校教諭。子どもが生まれ、大地の再生に出会い、子育てと一緒だと感じて赤ちゃんをおぶって講座に参加し、いまはそれが本職に。

「こどもに関わる現場、こどもが育つ場をずっとやりたかった。心子先生の『こどもが真ん中』の保育方針に出会ったとき、ここだと思った。この現場はこれまでの、いや、私の人生の集大成」

やっちゃんが責任を持って仕上げた通常のインターロッキングとは全く違う、あえてきちんと並べない、固めない、直線のない、それでいて子どもが怪我をしない仕上げ。駐車場だったスペースが園庭+(使われていなかった)レンガの道に生まれ変わった

作業中はさまざまドラマティックなシーンが展開されるのに、終わってみれば「なんとなく」しかその形跡は残っていない。でも、確実にそこを流れる風は変わっていて、足の裏に触れる感触はやわらかく、気のせいか木々が喜んで葉を伸ばしているように見えるのが大地の再生。

翌日は朝から雨。行ってみると、昨日とは全く違う風景がそこにありました。

園庭って、こどもがいてこそなんだ!と改めて思いました

嬉々としてユンボに群がる大勢のこどもたち。

レンガを割ったり、敷いたりする作業を手伝う女の子。

園庭の隅っこで、ダンゴムシを手に象の鼻のようなコルゲート管をじっと見つめる男の子。

大人たちは「なんか、変わりましたね」「森になった気がする」「広くなりましたか?」。

雨が降り出しても中に入ろうともせずカッパを着て遊び続けるこどもたちを見て、保育士さんも「なんだか、いつもより元気に遊んでいますね」。

足元に水たまりも泥水もない雨の園庭。

雨の中、散歩に行きたい子は行って、残りたい子は残って。外で遊んでも、中で遊んでも、その子の自由。

レンガの作業を手伝い続ける女の子

午後には、輪になって、園の保育士さんらが一堂に集って、この2日間のシェアが行われました。濱崎心子園長先生曰く、

「矢野さんは言います。雨風にならう。大地に聞く。道具に聞く。自分の思い込みを外して、その場に聞く。そうすると、その場が教えてくれる、と。私たちがやっている保育と一緒だと思いました。そして、矢野さんはごみを出さない。コンクリートのガラも全部その場に返して、持ち出さない。考えてみたら、ごみを出すって、排除することと同じなんですよね」

一番難しいのが整地作業。一つ一つの言葉が一人ひとりに落ちていく
こどもたちの場所だからこそ、こどもたちの目線に立った仕上げが求められる

遊ぶこどもがいてこそ生きる庭。勝手に生えてきたというたくさんのナンキンハゼも、ビワもアンズもジューンベリーも桜も、とても嬉しそうに見えました。

秋には見事な紅葉を見せてくれるナンキンハゼ

CF「浦堂認定こども園 みんなの庭プロジェクト~『大地の再生』とともに~」は6月末までの募集です。

園児が外に出てしまうからフェンスを、と言われ、泰子さんが考えた竹の柵
園児と同じおいしい給食をいただく大地の再生メンバーと心子園長