南フランスでの上映、無事に終わりました!
ひとりの想いが現実をつくる。
その想いが「持続する志」である限り。
別の言葉でいえば、消えることのない情熱だ。
島内アゾラン咲子さんからこのサイトの問い合わせ欄からご連絡をいただいたのは去年の7月のこと。南フランスのオクシタニー州に住んでいらして、『杜人』を見つけて上映したいと名乗り出てくださったのでした。
本編もまだご覧になっていないのにその情熱に火を灯してくださり、フランス語字幕も自ら引き受けてくださって、映画配給の申請(フランスではこれがとても面倒!)にもチャレンジ。映画館にも個別に交渉をして、『LA QUINZAINE DU JAPON EN OCCITANIE(オクシタニーの日本2週間)』という企画の中で4つの映画館に各1回ずつの上映を決めてくださいました。
この間のことはMotion Gallery「杜人」プロジェクトのアップデート42、43に載せたので、どうぞご覧くださいね。
日本に帰ってきて改めて思うのは、『杜人』に宿る見えない力のこと。雨が少なく岩だらけで一年中乾燥している南フランスは、風土も気候も日本とは随分異なります。もちろん、言語も、文化も、価値観も。それなのに、多くの方が「とても心を揺さぶられた」「感動した」「目に見えないものを感じるムッシュウ矢野の視点はもっと世界に発信されるべき」「やはり風が大切だとわかった。多くの学びと驚きに満ちていた」……と感想を述べてくださったこと。「大きな仕事をしてくれて、本当にありがとう」と仰ってくださった方も。中には「日本に行って講座を受ける」「早速自分の庭で実践してみる」と宣言された方もありました。
「違い」を超えて「通じるもの」。世界共通の何かが映画の底辺に宿り、それぞれのお客様の感性に響くものがあったことは、人間という生きものへの信頼につながる体験でした。
上映後のトークは事前に日本語で書いたものを咲子さんに訳してもらって、咲子さんのパートナーのフレッドに発音を特訓してもらって挑みました。フランス語の長文を読むのは学生時代の第二外国語の授業以来でなんと40年ぶり! 読むだけならなんとかなるだろう……という考えが甘過ぎたことは行ってから実感したことでした。いわゆる挨拶だけならともかく、ある程度の内容を伝える文章を読むのは何回練習しても言葉が口に馴染まない!
到着した翌日から毎晩練習したものの、なんとか伝わったかなと思えたのは最終日。もっと勉強して、いつかリベンジしたいものです。ちなみに、冒頭は「ベルサイユのばら」。バスティーユへと蜂起する市民に銃を向けることができず、フランス衛兵隊長の徽章をもぎ取り「人間は髪の毛一本までも自由なのだ!」と叫んだオスカルに心を射抜かれたところから始まる長い挨拶をしたのでした。私にとって矢野さんは、人間という徽章をもぎ取り、虫たちの側に立つ戦士なので。
ほとんど観光らしい観光はしない旅でしたが、咲子さんのおかげでさまざまな方に出逢い、家庭での食事に同席させていただき、サラスクという観光ではまず訪れない村に滞在し、そして、たくさんの動物たち(世界中どこに行っても変わらない!)に逢えたことは、忘れ得ぬ宝物になりました。
フランス国内で映画を配給する資格を取得した咲子さんは、『MORIBITO』はもちろんのこと、これから日本の映画を中心に配給にチャレンジしていくそうです。頑張れ、咲子さん!
さて、フランス行きですっかりご報告が遅れましたが、11月11日には1年かけて茨城県内に「点穴」をあけるように開催してくださった連続上映会のファイナルに行ってきました。なんと12回に及ぶ上映会を中心となって開催してくださったのは梅津順次さん。昨年11月の鬼石(群馬県)での上映会でお会いしたとき、47都道府県の中で茨城だけ未だ上映がないことを告げると、連続上映会を決意、実行してくださったのでした。
主催は「畑からつながるコミュニティ」の綱島さんご夫妻。コロナ禍で子どもも大人も自由に遊べ、学べ、自然とつながる場所として「大地の再生」の手法で竹林整備、水脈通しを行ったという場所には、心地よい風が吹き、生き生きとした空間が形成されていました。
どんな場所に行っても、感じるのは「結(ゆい)」。人間は共感することを喜ぶ動物と聞いたことがありますが、会話などなくても、そこに「いのちの共振」があれば通じ合える。
ご報告が長くなりました。今日から12月。斜めに長く射し込む冬の光は、また新たな年へと繋がっていきます。
どうぞあたたかくして、2023年の締めくくりを豊かにお過ごしくださいね。
2023.12.1 前田せつ子