進化する『杜人』の旅と二小の桜の物語

2022年4月15日の封切りからまもなく2年。三度目の春を迎えようとしていますが、3月はまた全国でたくさんの自主上映会が開かれる予定です。

3月2日は山口・岩国、3日は大分・速見郡、9日は東京・北区、神奈川・大倉山、大阪・富田林、10日は岡山・新庄市、20日は岡山市、岐阜・飛騨、23日は鹿児島・春日神社、奈良・生駒市、24日は栃木・日光……と続きます。上映会に参加された方が次は主催してくださるケースも多く、中には大地の再生ワークショップと連動して開いてくださるところもあります。こんなふうに草の根で広がっていくことを夢見ていたので、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

本当は全ての上映会に伺いたいところですが、主催者さんが監督トークで呼んでくださる場合に伺っています。なぜ『杜人』を撮ったのか? から制作過程、公開後に各地域を訪れて感じたこと、いま起きている問題、そこから始まった新しいプロジェクトについて、などお話ししています。

大事にしているのは参加してくださった方からのご発言。個人、地域で抱えている問題、個人、地域でできること、社会全体で取り組んでいくべき課題、私たちが目指したい未来について一緒に話すのは何より貴重な時間です。

最近では、議員時代(生活者ネットワーク)の同期や現役議員さんが主催してくださることもあり、上映後のトークで森林管理署の署長さんや現場担当者の方、自治体の首長さんとご一緒することも。

私に話せることは限られているので、最前線で取り組んでいる方と並んでお話しするのは憚られるのですが、矢野さんが見ている世界、未来、他の地域の実践例を共有することで、具体的に問題解決につながる道筋が見えてくることを願っています。

1月、西東京での生活クラブ地域協議会主催の上映会。満席でした

生活者ネットワークの議員は交代制。市民のバトンをつなぐために駆け抜けます

高知県香美市の上映会。森林管理署の署長さん、市長さんも登壇

打ち上げも会の一部。物部川流域をどうしたらよくしていけるか、熱い議論が交わされました

2月25日にはデンソー有志グループSOLEIL&ARUKUKIさん主催の上映会に伺い、主催者さんの熱き志、参加者さんの真剣な眼差しに圧倒されました。

デンソーは世界的な自動車部品メーカーですが、持続可能な社会、地球のための社会変革を宣言しています。今回、社員さんの寄附からなる基金から上映会を開催してくださいました。参加者の半数以上は社員の方で、矢野さんがやっていることに興味を示し、賛同してくださったのは凄いことだと思いました。

「限界を高めていくと、それが限界を超えた時のダメージが大きくなるんですね。つまり、簡単に壊れるものは、ちょくちょく壊れるけれど、大きな災害にはならない。何があっても大丈夫、と作られたものほど、壊れたら大きな災害になる」

「そういった意味では、完璧なものではなく、低いレベルでの『ガス抜き弁』を追加するような設計思想が最も重要かも。それは、個々の人間でも、組織でも、社会でも同じ」

全く異なる分野の方からこうした言葉が出てくることの大事さ。東日本大震災後の「復興」は「何があっても大丈夫」の方向に舵を取られて、自然と人間との距離が大きく開いてしまいました。能登の復興はそうではない方向にいかないと、滞り、淀みは肥大化するばかり。ますます大きな災害につながる危険を孕んでいると思います。

バブル景気の時代も、移植ゴテとノコ鎌を持ち、泥だらけで大地の呼吸と循環を促し続け、いまも自転車操業で動き続けている矢野さんと、こうした時代の先端を行く企業の技術者(元技術者)の方が手を携えて「懐かしい未来」へシフトすることができれば……。希望の光が差してきます。

あたたかく、志は熱過ぎる実行委の皆さま。次なる展開を期待しています!

さて、『杜人』のつづきとも言える二小の桜の物語も、新たな展開を迎えています。伐採直前に矢野さんはじめ大地の再生ネットワークで奇跡的に救出した約40本の木々のうち、8割の木々は春に向けて芽吹きを始めています。でも、二小校庭に戻せる木は願うより少なく、いま引き取り先(里親)を探している最中です。

ありがたいことに、いま何人かの方に手を挙げていただいていますが、場所はあるし、是非引き取りたいけれど、費用面が……という方が多く、これからそこをどう超えていくか、話し合い、知恵を巡らしているところです。

昨年12月に設立した一般財団法人「杜の財団」とともに、「いのちの経済」へ社会全体でシフトしていく仕組みづくりに取り組んでいくことができたらと思います。

そして、「樹木も人も、同じいのち」と当たり前に思える社会になれば……。

そんな第一歩(?)とも言えるコンサートがこちら。

仮移植にかかった費用も赤字なのに、二小への本移植費用も賄わなければならず、さらに里親も探さなければならない〜つづく つながる〜くにたちみらいの杜プロジェクトを見るに見かねて立ち上がってくださった「応援する会」主催のイベントです。

カンパ集めと里親探しに全力で取り組んでくださって、そのあたたかさとまっすぐな姿勢に感動します。コンサートもきっとそんな時間になるはず。昨年の救出劇から猛暑を乗り越え、必死にいのちを繋いでいる桜たちの映像も上映します。

まだまだお伝えしたいことはあるのですが、また次に。

よき春をお迎えください。

 2024.2.26 前田せつ子

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