奈良、徳島、山口、広島へ!

 

 今年初の線状降水帯に関する警報が出ました。また、この季節がやって来ました。

 2018年6月末から7月頭にかけて、私は高速バスで実家のある山口に帰省していました。この頃、骨粗鬆症の母の骨折が相次ぎ、入退院の繰り返し。父は認知症を危ぶまれ、頻繁に帰省していたのでした。

 帰省中は雨続き。私は7月7日〜8日の気仙沼講座を撮影したかったので、5日夜に実家を出て、高速バスに乗りました。

 バスの中で実家から車で1時間のところに住む姉と何度もやりとりしたのは、避難警報が出ているけれど避難すべきか否か。姉の家は避難所よりも高台にあり、しっかりした躯体。川のそばとはいえ、裏に住む足の悪い義父、義母を連れて避難するのは逆に危ないのでは? とやりとりを繰り返したのでした。

 私は、いざとなったら姉の家より高台にある神社やお寺に避難させてもらうのがいいのでは、と提案しました。結局、河川が決壊する寸前で雨は収まり、事なきを得ましたが、実家の両親にもいざとなったら、避難所に指定されている中学校まで早めに避難するか、さもなくばお隣の鉄筋造の家の2階に躊躇せず避難させてもらうよう念を押しました。

 さて、一旦家に寄って、7日に気仙沼の現場に行きましたが、そこには広島からのボランティア・スタッフもお二人みえていました。

 その夜、お二人はご自宅にいるご家族と何度もやりとり。止まない雨、家にも帰れない娘さん。家の裏山が崩れてきそうだとSOSを発される奥様。翌日、土砂が家に流れ込んできたお一人は、急遽気仙沼から広島の竹原まで帰られることになりました。

 それが2018年、西日本に甚大な被害をもたらした平成30年豪雨(西日本豪雨)でした。

「杜人」には、矢野さんが大地の再生のスタッフに呼びかけ、支援も募って行った被災地支援の様子も収められていますが、奇しくも4年後にあたる7月9日から、広島・シネマ尾道と山口情報芸術センターで上映がスタートします。

 山口では7月9日(土)10時30分〜上映回の前後にご挨拶とアフタートークを行います。

 地元スペシャルということで、2018年当時90歳だった父を撮った「100歳に向かって走れ」を同時上映。

 これは、2018年3月から半年間受けたアップリンク主催ムービー制作ワークショップ15期の修了制作で、本当に初めてつくったドキュメンタリー(とも呼べないようなものですが)。

 カメラはハンディカム、編集はiMovie(?違う簡易ソフトだったかも)、3日間くらいで編集した粗く拙い作品ですが、生涯に一度くらい父に「主演男優」を経験してほしくて、山口情報芸術センターに上映のお願いをしたら、「高齢者が元気になる作品は大歓迎です!」とかけていただけることに。

 当日は父も母も一緒に行く予定ですが、たぶん「杜人」の途中で爆睡してしまうはず。いびきがうるさくなったら強制退出しますので、どうかお許しを。

 そして、広島では7月10日(日)9時〜上映回の後に、4年前に呉市安浦町中畑の支援を繋ぎ、自らも泊まり込みで支援をされた下村京子さん、上村匡司さん、兼田汰知さんという大地の再生メンバーを迎えて、当時を振り返りつつ、これからどうやって私たちは自然と関わっていくのか、というお話をしたいと思っています。

 さらに、11日(月)には、広島在住の映画監督、田中トシノリさん、農業も映画作りもされている竹本泰弘さんと共に、ドキュメンタリーの可能性についてお話をさせていただく予定です。

 順番が前後しましたが、7月7日(木)は奈良県宇陀市で「Hi Studio もとたねしゃ」を造られた木下伊織さんの『美しき大地の再生』写真展と『杜人』上映会の、10時〜の上映後、トークをさせていただきます。

 伊織さんはずっと矢野さんと大地の再生を追いかけて素晴らしい写真を撮られてきたプロのフォトグラファー。初めてお会いしたのは2018年7月。やはり4年前です。

 今回、写真展を拝見できるのも楽しみです。

 

 続いて7月8日(金)には徳島市にある文化の杜ミニシアターで、コープ自然派しこく主催の上映会があり、午前の部と午後の部の間(12時〜)にトークをさせていただきます。

 こちらはご好評いただいている杜人のチラシのデザインもしてくださったベテラン・デザイナー、山下リサさんの想いから始まった上映会。

 奈良と徳島の上映会は、もしかしたらもう満席かもしれません。どうぞ、ご確認のうえ、お出かけください(山口と広島の劇場は当日券のみの販売です)。

いま、初めて近鉄特急で名古屋から奈良に向かっています。

 小さな国土に多様で豊かな自然、風土が凝縮されているこの国の底力が目に飛び込んできます。

 どうか、もっともっと大地が、植物が、すべての生きものが息づく未来でありますように!

      2022.7.6 前田せつ子