旧暦元旦! 新たな挑戦の始まり

 本日1月22日、旧暦の新年が明けました。おめでとうございます。立春に一番近い新月を元日とした旧暦は、人間よりも月、太陽、宇宙の動きに従う意味で腑に落ちるところがあります。

 さて、お知らせしたいことがいくつもあります。

 まずは、待望の「大地の再生」の視点と技術を収めた本が1月18日に出版されました。矢野智徳さん、大内正伸さん共著による「『大地の再生』実践マニュアル〜空気と水の浸透循環を回復する」(農文協)です。

 私が矢野さんを追いかけ始めるひと月前、大内さんは矢野さんを追って屋久島の講座に参加。そこでこれまでご自身に欠けていた「空気の視点」に気づかれたと言います。大内さんとは、福聚寺や西日本豪雨被災地など数多くの現場で会い、半ば「同志」のように互いを鼓舞し合い、エールを送り合ってきました。

 矢野さんの本を作るのは、映画を作るよりも大変だったことでしょう。というのも、矢野さんはどんどん進化し続けていて、文章は修正が効くからです。
 待ち望む人が多いなか、紆余曲折の長い年月を経て、この本が産声をあげたことを心から嬉しく思います。
 なんとこの本、予約が殺到し、発売前から重版決定。1月22日現在、「環境・エネルギー部門」のベストセラー第1位に。本が売れない時代と言われますが、この本は長く生き残っていく本だと確信しています。

2/11(土)『杜人』上映会&出版記念講演会があります。講師は矢野智徳さんと大内正伸さん!

 講座に参加されたことのない方には若干理解が難しいところがあるかもしれませんが、最初から読了する本では決してなく、手元に置いて、パラパラめくるもよし、気になったところから読むもよし。繰り返し読むことでそこに書かれている視点、技術が馴染んでいくことと思います。その時こそ実践の時!
 ノコ鎌と移植ゴテという、両方買っても千円に満たない道具ですぐにできるのが何より「大地の再生」の強み。庭の隅やベランダの植木鉢から始めていただければ、植物の変化、土の変化が実感できるはずです。

1月9日、全国のスタッフが結集した上野原「杜の学校」新年会で行われた水切り作業。表層5cmの改善がすべての要
結作業で風の草刈り。ノコ鎌と移植ゴテは万能

 ここで、嬉しいニュースを。昨年4月15日の封切り館であるアップリンク吉祥寺、2022年の観客動員ランキングで、なんと第10位になりました。

  系列のアップリンク京都でも、同じく第10位にランクイン。

 こんなにスーパーインディペンデントな映画が、こんなにたくさんのお客様に観ていただけたのは、口コミという最古かつ最強のツールで応援してくださった皆さまのおかげです。ちなみに、映画館46館全体の2022年の観客数は21,710人。これに加えて120を超える自主上映会で1万人くらいの方に観ていただきました。ほんとうに、ありがとうございます!

日本の人口で単純に割れば、5000人に1人以上の方が観てくださったということ。そのおひとりが10人の方に伝えてくだされば、500人に1人に。細根のように、毛細血管のように、この浸透循環が巡っていくことを祈ります。

 この間、監督トークで伺ったのは、東京・国分寺カフェスロー、そして埼玉・本庄シネマクラブ。
 1/14(土)カフェスローは『シチリアの奇跡〜マフィアからエシカルへ』を上梓されたばかりの作家の島村菜津さんと登壇、地域の方を中心に満席をいただき、熱い会になりました。

エシカルなカフェの草分け的存在、カフェスロー

島村さんは矢野さんとの出会いに加え、マフィアから没収した土地をオーガニックな畑に変えているシチリアの現在について話してくださいました

 

 1/15(日)本庄シネマクラブの上映会では、大地の再生関東甲信越支部の押田大助さんをはじめ「本気プロジェクト」の主催で、地元で活動する方々とのパネル・ディスカッション。
 本庄南小学校の岡村和美校長、地元・竹並建設会社の竹並達也社長、イベント等も積極的に開催するソルフロース(園芸店)の大澤さんらが、『杜人』の感想とともに、これから本庄市でやっていきたいことを熱く語ってくださいました。

写真左から竹並社長、奥に主催の「本気プロジェクト」の山内和彦さん(上越電気工業)、岡村校長先生、奥に司会進行を務めてくださった「本気プロジェクト」の関口佐知子さん(暮しのデザイン 季の香)、右に押田さん(中央園芸)

 岡村校長はもと美術の先生。「美術の力で学校を創る 子どもたちが輝く」方針を掲げ、「美術は人権教育!」を信念に、果敢に生き生きとした学校づくりを進める方で、なんと南小は現在不登校児童ゼロなのだとか。この日は、子どもたちが自分で選んだアースカラーの色画用紙に描いた「森」の絵が飾られ、どの絵も夢のような物語のような生き生きとした世界へと扉を開いてくれました。

 昨秋行ったクラファンのエンドレス・ゴールとして掲げた『杜人〜子どもエディション』のことを話すと、「全学年の児童に観せます!」と宣言してくださった岡村校長先生。必ず形にすべく、頑張ります!と約束しました。

 竹並さんはちょっと前まで本庄西小学校のPTA会長務めていた方で、学校のシンボルツリーの欅が枯れてきて伐採されることになったのを知って、校長先生に直談判されたそうです。話し合いの末、伐採は延期に。春に新芽が吹いて来るかどうか、様子をみることになったとか。 
 それを聞いた押田さん、仕事仲間の濱田さんと共に会が終了するのを待って欅の元に直行。とにかく、まずは点穴をあけられたそうです。

 さらに子どもたちと一緒にモグラ穴をあけることができたら、地下水脈が動き出して樹勢回復もあり得るでしょう。その時、何より自信を取り戻すのは子どもたちに違いありません。

 最後に、同じくクラファンのストレッチ・ゴール、『杜人〜インターナショナル・エディション(英語字幕版)』の制作についてお伝えします。字幕付けの作業は終わり、現在、公開の仕方とタイミングを検討しているところです。こちらが予告編になります。

 まだまだお伝えしたいことはたくさん。1/14にNPO法人グリーンワークスの会員研修として行われた中村桂子先生(生命誌研究者)のお庭の環境改善作業、また、播州織を現代に再生する西脇市のtamaki niimeで始まった「動物たちの家」プロジェクトなど、人工構造物を敵とせず、共存を図る新たな施工法への挑戦については、また次回。

 

 古きもの、新しきもの、無機物、有機物、植物、動物、人間、大地、空気と水、光と熱の、新たな循環と共生を目指して。『杜人』も進化していきます。

 2023年も、どうぞよろしくお願いいたします。

古いコンクリートの浄化槽が動物たちの家に!?
羊たちも
烏骨鶏も
みんなで住める家が
ほんとうに出来るのだろうか?
挑戦は続きます

   2022.1.22 前田せつ子

未来へのヒントは過去にしかない〜2022年のクリスマスに〜

 

 

 寒波襲来。停電の中、カイロと防寒着で一日一日凌いでいらっしゃる方、雪かきでヘトヘトに体力を消耗された方、体調を崩されている方々に、心よりお見舞い申し上げます。

 今朝の東京は風もなく、冬至を過ぎた太陽があたたかく降り注ぎ、植物も鳥もホッとした表情を見せていました。

 

 公開から8カ月と10日。息の長い応援をいただき、奇跡的にいまなおロードショー公開が続いています。改めて心より御礼申し上げます。ありがとうございます。

 この間、監督トークで伺った劇場、自主上映会場は合わせて48箇所。トークはのべ84回。85回目のアフタートークは12月27日、Morc阿佐ヶ谷で12:50回終了後に決まっています。光栄なことに、劇場からのオファーで、公開時に推薦コメントをくださった龍村ゆかりさん(『地球交響曲』プロデューサー)と一緒に登壇させていただくことになりました。

 残念ながら私には『地球交響曲/ガイアシンフォニー』という壮大で深い洞察と祈りに満ちた作品について述べる資格はありません。第一番がつくられた1992年、私は会社員。自分のことに精いっぱいで地球についてほとんど何も考えていなかったからです。あの頃、バブルは崩壊していたとはいえ、まだ経済至上主義は続いており、環境問題は現在ほど危機的状況ではありませんでした。実際には加速度を増して崖っぷちへと突き進んでいたわけですが、切実に感じとっていた人々はまだ少数派。実際、『第一番』が完成した時、人々の反応は冷たかったそうです。

 現実世界を生きる人々に、その生活の根底を揺るがすような警鐘を鳴らす人は疎んじられます。それが真実であればあるほど、なおさらに。

 でも、強い信念に貫かれたこの作品に共感・共鳴する人は少しずつ増え、昨年完成した第九番を含め全9作が、現在ではのべ250万人を超える人々に届いています。

 第一番はとくに生まれたての子どものように興奮と感動に溢れていますが、中でもこの時期思い出すのがアイルランドのニューグレンジ。先史時代(5000年前!)につくられた「羨道墳(せんどうふん)」(王の遺体が安置されている空間まで狭い通路羨道が続いている古墳)で、一年に一度、冬至の朝にだけ光が王の墓所を照らすつくりになっているものです。

アイルランド・ミース県の小高い丘に建つニューグレンジ(2017年夏撮影)。エジプトの大ピラミッドより古いという
この石を積むのにどれほどの労力と時間を費やしたのだろう
5000年前につくられて以来、一滴の雨水も漏れたことがない完全ウォータープルーフ。
最近になって入り口はコンクリートで補強されたが、屋根にあたる部分は一切手を加えていないとか。
冬至の朝にだけ真ん中の細い通路を通った光が中央の墓所に届く

 当時の人々が天文学、地学、物理学に通じ、現代でも及ばない高度な文明を持っていたことを証明するものですが、詳しいことはわかっていません。そして、この遺跡のシンボルとも言えるのが、大きな石に刻まれた文様。

5000年前の人々が描いた渦巻きの文様!

 現代人が「科学」と名づけて最先端をいっているかのように思い込んでいるものは、実はとっくに発見され、検証され、淘汰されたものかもしれない。この渦が示すものにいまこそ想いを馳せるべきかもしれません。

 哲学者の内山節さんが先週、こんな話をされていました。

「未来を考えるとき、ヒントは過去にしかない。一つの考え方が壁にぶち当たったとき、現在の問題意識をもって過去から学ぶことしかない」(12/17 陽楽の森連続講座第7 回「自然との関係を通して現代社会を捉え直す」)

 日本列島に平均して30〜40万人住んでいたという縄文人は、なぜ1万年以上も変わらない暮らしをしていたのか。なぜ生産性の向上など考えなかったのか。過去に学ぶことで精度を増した未来が見えてきます。

 さらに、こう仰いました。

「江戸期までの日本には、宗教も信仰も存在しなかった。神も仏も存在していたけれど、それらは特別の精神世界を意味するものではなく、日々の暮らしのなかに埋め込まれているものだった。かつて人間の中には死者も含まれ、自然の向こうには神仏があった。自然と生者と死者と神仏の社会。これがかつての日本の社会観」

 目まぐるしく流れてくる情報と一旦距離を置いて、見えない世界に心を寄せる静かな時間が、いまとくに求められているように感じます。

 12月27日のアフタートークは、龍村さんから未来への眼差しを示していただきながら、客席の方々と一緒に、新たな時代へのパースペクティヴが共有できるような場になるといいと思っています。劇場サイトで現在予約受付中。劇場では最後のトーク。お目にかかれると嬉しいです。

 

    2022.12.25 前田せつ子

P.S.年が明けて1月8日からは逗子のCINEMA AMIGOで新春アンコール上映があります。

また、1月22日上津役シネマ、2月4日〜5日ミクスタ・D・シネマ、2月25日〜26日東田シネマと、矢野さんの故郷・北九州での上映も続きます。

岡山シネまるむすび、江古田映画祭をはじめ、各地で新春以降の上映も決まっています。

2023年も、どうぞよろしくお願いいたします。

ニューグレンジへの道の途中、やってきてくれたクックロビン

 

冬本番を前に、足元から希望の灯を!

本格的な冬がやって来ました。

迎撃ミサイルを含む国防費の増大が閣議決定され、2011年の事故以降、極力削減と位置付けられていた原発を「最大限活用していく」ことが表明される一方で、地球規模の気候変動に対しては机上の「脱炭素シフト」が叫ばれるだけ。

国産のアサリを店でほとんど見なくなったように、海の生きものも、山の生きものも減っているのに、人間目線、経済優先で突き進む現状に、寒さ以上に心が凍りそうになります。

いや、こんなときこそ、足元を見つめて、地を這うように進み続けなければ。

封切りからこれまで、一日も途切れることなく全国で劇場上映が続いてきましたが、12月1日だけ空白を挟んで、2日からはMorc阿佐ヶ谷で4週間のアンコール上映中です。

こんなに長く上映が続いているのは、足を運んでくださった方が口コミで広めてくださったおかげです。
改めて厚く御礼申し上げます。

Morc阿佐ヶ谷では12月のイチオシ作品としてリーフレットの表紙に載せてくださいました。29日までですが、都内はそれがほんとうに劇場最後。27日12:50~上映回後には、最後のアフタートークに伺います。
この日は劇場からのオファーで、『地球交響曲』プロデューサー、龍村ゆかりさんと一緒にお話しさせていただくことになりました。
封切り前に推薦コメントをお願いしたものの、実際にお会いするのは今回が初めて。
龍村さんは、美しいピアノ曲を提供してくださった水城ゆうさんとも長く親交がおありだったので、そのお話も伺いたいと思っています。
Morc阿佐ヶ谷は『荒野に希望の灯をともす』をはじめ他の映画のラインナップも素晴らしいので、是非チェックしてみてください。

https://www.morc-asagaya.com/2022/12/15/moribito-g…

年が明けて神奈川では、CINEMA AMIGOで1月8日から再々再上映していただくことになりました。2022年を代表する作品として、だそうです。自主上映会が増えている中で、年を越して映画館で上映していただけるのはほんとうに珍しく、嬉しいことです。福岡の東田シネマさん、岡山のシネまるむすびさんでも、新春上映が決まっています。詳細は改めてお知らせしますね。

12月8日には福聚寺のある三春町で上映会が開かれました。全3回上映で、1回目、2回目は、なんと町内にある田村高校の1年生、2年生が授業の一環で鑑賞!

「行きつけの杜」プロジェクトで植林活動に取り組む三春VIVOの渡部友紀さんと登壇しました

「ずっと観ていたい映像でした」
「土の中の環境にそんなに興味はなかったけれど、水溜りが土砂崩れの原因になるとわかって、できることをやっていきたいと思いました」
など、嬉しい感想をいただきました。

一般向けの夜の回には、三春町の教育長も。
「子どもの頃を思い出しました 」
「コンクリートは全部外さなくてもいいんですね」
「人間は自然と共にしか生きられない。子どもたちに伝えていきたいと思います」と感想を寄せてくださいました。

上映の間に福聚寺を訪れて驚いたのは、ヤマゴケが増えていたこと。以前伺ったとき、「苔むした寺にしたいんです」と仰っていたご住職の玄侑宗久さん。やっと念願の苔が増えてきたことはもちろん、植生の変化、風の通りを日々感じていらっしゃることでしょう。

境内はやわらかい草地となり、苔むしてきていました
来春も見事な花を咲かせてほしい愛姫の桜

さて、10月24日日比谷図書文化館で行われた中村桂子さん(生命誌研究者)と矢野智徳さんのトーク、改めて紹介しておきます。短い時間ながら「生きものとしての人間」に迫る対談です。生きもの研究の最前線を走り続ける科学者と、自然と対峙して現場を科学し、真理を追求してきた造園家の言葉に込められた深い意図を、祈りを、感じてください。

25分のダイジェスト版はこちらです。

さあ、ここからは、この間のご報告を一気に。

別府ブルーバード劇場で92歳の館長・岡村照さんを囲んで

岡山県の西粟倉村にあるあわくら図書館にも呼んでいただきました。ここは合併を拒否し、林業でやっていくことを宣言した人口1500人の村。間伐材で作られた美しい図書館には村役場が併設、子どもの図書館と遊び場も!

下のフロアは子どもの居場所。滑り台で。ここは風力発電もメガソーラーも誘致しないと決めているとか

藤野藝術の家での上映会は、地域で活動している方々のパネル・トークが素晴らしかった!

地域の結が形になった上映イベントでした。アンケートの回収率も、書き込みも凄まじかったです

東慶寺の大地の再生スタディツアーにも伺いました。息を取り戻した境内は紅葉も鮮やかに、リスの鳴き声が響いていました

倒れたナラをそのまま生かして周囲を息づかせる

エンディングシーンに登場する日野おちかわの里で開かれた4回目の大地の再生講座では、水溜りを矢野さんが検知棒で突くと、一気に小川に! 

おとなも子どもも結作業

講座が終わって、焚き火を囲んでシェアタイム。子どもの遊び場をみんなで再生したこの場所は、落ち葉がまんべんなく大地を包んで、足底にあたる地面も柔らかく。来年1月14日には七生公会堂で上映会を主催されます(予約不要だそうです)。

2022年もいよいよあと2週間。
あたたかい希望の灯をともして、良い年をお迎えください。

 2022.12.18  前田せつ子

「コナラが教えてくれたこと」2000-2022@国立

 11月10日(木)、12日(土)、地元である国立で上映会が開催されました。12日は、Motion Gallery杜人プロジェクトのリターンで行われる矢野さんのトーク付き上映会。かつて国立市民だった矢野さんにとっても、私にとっても、熱い想いが込み上げる日になりました。

 初めて国立で、ドキュメンタリーの自主上映会をしたのが2007年10月。バブルの頃に音楽雑誌をつくり、好きなことをして、環境問題を真剣に考えることもなく暮らしてきた私が初めて「市民運動」として行った上映会でした。

「いのちの海に放射能を流してはいけません!」

 リンカランという雑誌で連載を担当していた辰巳芳子さんの怒りを目の当たりにして、慌てて観に行った鎌仲ひとみ監督の『六ヶ所村ラプソディー』。続いて観た『ヒバクシャ〜世界の終わりに』に、空が落ちてくるような衝撃を受けたのを忘れません。

 知らなかった、では済まされない、この国の、世界の原子力政策。受け取ったものが重過ぎて、誰かと分かち合わずにはいられず、仲間を募り、女たち12人の実行委員会をつくり、上映会を開催しました。延べ400人近い方が観に来てくださったこの日、鎌仲監督が語られたこと。

「イラクに落とされた劣化ウラン弾からの被曝で子どもたちが亡くなっていく。その原料は日本の原発から排出された核のゴミだった。ラシャという少女は私に言った。『私を忘れないで』。その約束を果たすために私はドキュメンタリーを撮っている」

 鎌仲監督の映画は全部国立で上映すると決めて、2010年、ピースウィークinくにたち「まちじゅうが映画館」で『ミツバチの羽音と地球の回転』を上映し、2012年『内部被ばくを生き抜く』、そして2015年、原発事故後の女たちの奮闘と希望を描く『小さき声のカノン』をくにたち市民芸術小ホールで上映しました。

 その時一緒に実行委をやった仲間たちが、今回「くにたち映画祭2022」の一環として2日間、さくらホールと芸小ホールで『杜人』を上映してくれました。私にとってはもちろんですが、12日の上映会は、矢野さんにとっても大切な会になりました。

 2000年。かつて矢野さんが国立に住んでいた頃、一本の立派などんぐり(コナラ)の木が伐採されることになりました。まちができる前、雑木林だった頃からたくさんの生きものを住まわせ、木陰をつくり、実をたわわに実らせて小動物たちを育んでいたその木が人間の都合で伐られることになったとき、多くの市民から声が上がったそうです。

「なんとか生かす方法はないものか」と、有志が矢野さんに相談、矢野さんは「引っ越し」に挑戦しました。

 クレーン車を使い、歩行者も止める大きな工事。かかる費用は、「百歳どんぐり募金」を募ったそうです。

見守る市民(当時の写真)
交通規制で歩行者を止め、クレーン車も使う大工事。なんとかコナラをいのちを繋ごうとしたが……

 けれども、泥水がしみ込んでコンクリートのように硬くなった地下3mの礫層を穿つには時間が足りず、移植後1年半に渡って必死に手を尽くしたものの、結局コナラが新たな場所で息をすることはありませんでした。市民の祈りは届かず、結局枯れてしまったコナラの木。そのことを矢野さんはその後もずっと宿題として抱えていました。

 コナラの木の移植を試みた大学通りと、矢野さんと出逢うきっかけになったさくら通り。芸小ホールに向かって歩きながらフィールドワークを行うことを決めたのは上映会3日前。にもかかわらず、岩永都議や当時を知る重松市議、小川市議、古濱市議をはじめ多くの市民が参加してくださり、一緒に歩きました。

「まさに、この場所です」と矢野さん。3m下の礫層に泥水が詰まり、コンクリートのような硬盤層を形成。
歩行者規制の時間制限でそこに穴をあけることができなかった

 

 大学通りも、さくら通りも、道路側溝と泥水が流れ込んだ礫層に囲まれ、抜きのない植木鉢になっていること、それで樹木が弱っていること、でも、それは移植ゴテ一つで改善できることを説明しながら、いまは谷保第三公園に横たわり、ほかの木々の呼吸を支えているコナラの木のところへ出ました。

「このコナラと一緒に植えた低灌木たちが他の木たちの呼吸を繋いでいるんです」と矢野さん。
硬く締まり、泥水が流れ出す状態だった谷保第三公園の地面から泥水が出なくなったという

「コナラの木を、無駄死にはさせない」。矢野さんの中で、上映会後のテーマは定まっていました。

「表層3センチでいい。少しやわらかくなったら、次は5センチ。小動物たちがやっているように
穴をあけることで空気流が地中に入っていく。息ができる環境になるんです」

 矢野さんのトークのテーマは「コナラが教えてくれたこと」。

 東京の大動脈が詰まって明治神宮の木々が瀕死の状態であること。

 大学通りという国立の大動脈も詰まっているけれど、そこに市民で点穴をあけていくことで息を吹き返すこと。

 矢野さんの話は、一本の木のいのちに向き合うことは、あらゆるいのちの根源に向き合うことであり、植物のいのちへの鈍感さはあらゆるいのちへの鈍感さに繋がることを実感させてくれました。

 都市のど真ん中で起きていることも、わずか11年で事故被害などなかったかのように推進に舵を切った原子力政策も、森林、山の生きものを薙ぎ倒して進む再エネも、根っこは同じ。でも、絶望している暇はなく、足元を見て進むだけです。共感し、共に怒り、共に動くことができる仲間がいれば、できるはず。

300席の会場が満席に。実行委の情熱の賜物ですが、こんなに仲間がいることを心強く思わずにはいられません

 

青梅シネマネコをいっぱいにしたチーム青梅のメンバーも
じゃらんじゃらん小舎のみなさまも
会社員だった頃の同僚も
畑仲間も
実行委のみんなも!

 フィールドワークを含め、矢野さんのトークは改めて、何らかの形でお伝えしたいと思っています。どんどん宿題が溜まっていきますが、頑張りますので、気長にお待ちくださいね。

桐朋学園の大塩先生、ガーデンデザイナーの正木覚さんも参加してくださいました。足元からの環境改善、始めましょう

   2022.11.28 前田せつ子

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「ホピの予言」を伝える辰巳玲子さんとの出逢い

 11月5日、待望の対談が実現しました。

 アメリカ・インディアンと呼ばれるようになった人々の大切なメッセージを、『ホピの予言』という映画を通して、また、彼らとの交流や現地への旅を通して伝え続けるランド・アンド・ライフの辰巳玲子さんは、いつか矢野智徳さんと出逢ってほしいと願う方のおひとりでした。

 私が初めて玲子さんに出逢ったのは2008年。初めて『六ヶ所村ラプソディー』を観た自主上映会の主催者さんが、「絶対観たほうがいい」と『ホピの予言』の上映会を企画、開催。文京区での上映会にいらした玲子さんは、インディアンドラムを叩き、四方に祈りを捧げて、その会を始められたのでした。

 太古の昔から大地を護り、あらゆる生きものとともに暮らしてきたインディアンと共通する言葉、暮らし方、生き方を感じずにはいられない矢野さんと玲子さん。お二人に出逢っていただくことは、『杜人』を撮り始めた頃からの夢でもありました。

 「鬼の結と大地の再生まつり」と題された群馬県藤岡市鬼石での2日間のイベントの初日、11月5日。その場に響き渡ったのは、法螺貝とインディアンドラムと祈りの歌でした。

長命山寿光寺の中山ご住職率いる法螺貝隊と玲子さんのインディアンドラムと祈りの歌で、祭りの場は開きました
神流川(かんながわ)が流れる鬼石というまち。中山ご住職によると、古来、人は人知の及ばぬ畏れの対象を「鬼」と呼んだ。自然とは鬼であり、鬼石では節分日も「福は内、鬼は内」なのだそうです
倉を改装した会場は満員でした
大きな木が見守る中で
子どもも大人も楽しい祭りになりました
出展者の一つ、なないろごはんのオーガニック・ベジランチ

 第1部は上映会と監督トーク、第2部は1時間50分、辰巳玲子さんと矢野智徳さんのトークショー。始まってみればあっという間で、玲子さんは何度も矢野さんを「インディアン」と呼び、矢野さんはホピの生き方に共感。お二人の底を流れるものが合流し、新たなうねりを生み出す瞬間に立ち会えた気がします。

 この日のトークも、文字起こし、あるいは動画の形で、きちんとお伝えしたいと思いますので、しばらくお待ちくださいね。

「平和の民」ホピが伝えてきた人間の生き方を実践するお二人のトークは軽やかに弾みながらも深く、白熱したものになりました
たくさんの実行委員の皆さんの想いと行動の積み重ねの上に、実現した祭り

なぜ、この大木は伐られなければいけなかったのか。この場所から、また新たな物語が始まりそうです

 

泊めていただいたゴルフ倶楽部の宿泊施設からの眺め。ゴルフって……と思っていたけれど、元は自然の起伏地形の中での、牧歌的で伸びやかな遊びだったに違いない……と思った朝でした

 11月の上映会は濃厚過ぎて書き切れません。まだまだ報告は続きます!

    2022.11.28 前田せつ子

 

中村桂子さん(生命誌研究者)✖️矢野智徳さんのトークショーに、長南町「結」の上映会!

鳳凰のような雲が迎えてくれた千葉県長生郡長南町の蒼い空

 前回のご報告から、ひと月以上間が空いてしまいました。この間、各地の上映会が充実し過ぎて、ご報告が追いつかず、申し訳ありません。何回かに分けて掲載していきますね。

 さて、10/17に開催された朝日新聞ボンマルシェ編集部主催の上映会ですが、10/27朝日新聞朝刊中面に掲載されました。同じ紙面に、大地の再生士、佐藤俊さんのインタビューが掲載されていたこともあり、反響もたくさんいただきました。ありがとうございます。

全面広告となっている紙面ですが、これに関しては広告でもタイアップでもありません

この日の上映会参加は読者の方から抽選ということもあって、環境に強い関心のある方が集まってくださったように思います

 

司会進行はボンマルシェ編集部の土井さん。話しやすい雰囲気をつくってくださいました

 10/24には、日比谷図書文化館内にあるコンベンション・ホールで、上映会に加えて、生命誌研究者の中村桂子先生と矢野智徳さんのトークショーが実現しました。

主催はNPO法人Green Worksさん。中村桂子さんと矢野さんの初顔合わせとなりました

 この日のトークの内容は、こちらに文字起こしをまとめたので是非お読みください。

 YouTube(ダイジェスト版)はこちらです。

「生きものとしての人間は上から目線ではいけない。他の生きものと手を取り合ってこそ、この地球で生きていくことができる」と意気投合されるお二人が印象的でした。いつか別の場所で、腰を据えた対談が実現することを願わずにはいられません。

 10/30には、今年1月に国立から千葉県長生郡長南町に引っ越したアーティスト、聖原司都子さんの「この指止まれ!」に始まる上映会が、なんともあたたかい雰囲気の中、開催されました。オープニングは長南中学吹奏楽部7名による演奏で、最後は「わたしをつつむもの」。町の風景、そこに暮らす人々を象徴するような、優しく純粋な音の響きは、からだ全体に沁み通り、浄化してくれるようでした。

 上映会場には、赤ちゃんからご高齢の方々まで、なんと250名の方が訪れてくださり、音楽を提供してくださった山口洋さん、地元でフリーランスの木こりをしている田島俊介さんと共に、トークの時間も楽しませていただきました。地域の「結」を肌で感じる、ほんとうに素敵な上映会でした。

 この日の様子は、長南町の地域おこし協力隊で実行委員をしてくださった田島幸子さんがブログにまとめてくださいましたので、是非、お読みくださいね。

真ん中が「さっちゃん」こと田島幸子さん
右から実行委代表の聖原さん、山口さん、左が田島俊介さん。細田美紀さんからいただいた自然栽培の蓮根を手に、記念撮影!
この上映会をきっかけに、草の根の環境改善、地域の「結」が育っていきますように!

 渦を起こすのは、たったひとりの想い。誰かの純粋な願いとものいわぬいのちに寄り添い、世界が善き方向へ向かうことを祈る強い気持ち。その想いが地下水脈のように繋がり、じわじわとタフな草の根を伸ばしていることを実感する日々です。11月の濃厚な上映会は、続いてご報告しますので、しばしお待ちくださいね。

  

 12/2〜東京・Morc阿佐ヶ谷、12/3〜大分・シネマ5で上映が始まります。4/15〜続いてきた劇場公開もいよいよ最終。私も12/5、27には阿佐ヶ谷に伺います。自主上映会はこの後も全国で上映が続きます。是非、チェックしてください。

     2022.11.28 前田せつ子

封切りから半年。各地の上映と『阿賀に生きる』のこと

 4/15の封切りからまる半年が過ぎました。10月19日現在、沖縄シアタードーナツ、香川ホールソレイユで公開中。こんなに長く、途切れることなく劇場公開が続いているのは、ひとえに口コミと「この映画を観たい。上映してほしい」という声の力だと思います。ほんとうに嬉しく、ありがたいことです。10/30~深谷シネマ、12/2~Morc阿佐ヶ谷でのアンコール上映に加えて、11/18~別府ブルーバード劇場での上映も決まりました。初日には監督トークにも伺います。是非、地域で頑張っているミニシアターを応援してくださいね。

南紀白浜、三段壁

 一方、この秋は週末ごとに自主上映会も全国で開催。10月に入ってから、青山ウィメンズプラザ、創価大学、南紀白浜のクオリティソフト社内のホール、朝日新聞社内イベントホールに、監督トークで呼んでいただきました。

 どの会場にも主催者の方の澄んだ志と情熱、集まられた方の清新であたたかい「気」が通っていて、心が揺さぶられました。

 

女性たちが実行委を務められた青山ウィメンズプラザでの上映会。満員御礼でした
創価大学では授業の一環として教室で上映。フィールドワークに繋げていくそうです
南紀白浜での上映会はクラファンのリターンで実現したもの。自然栽培でみかんを育てるイベファームさん主催

 

ここでも実行委は女たちが元気

 

朝日新聞社さんのイベントホールで、ボンマルシェ読者さんを招待して開かれた上映会
ボンマルシェ編集部の皆さま。記事は10月下旬に載るそうです

  

『杜人』の旅は、さまざまな出逢いを運んできてくれます。

 実は1992年に公開されたドキュメンタリーの名作『阿賀に生きる』(佐藤真監督)を、私はこれまで観ていませんでした。それが、9月24日新潟シネ・ウインドに大熊孝さん(新潟大学名誉教授)が来てくださり、声をかけてくださったことから10月10日、16ミリフィルムで観る機会を得ました。『阿賀に生きる』30周年イベントで、大熊先生、撮影の小林茂さん、キーパーソンの旗野秀人さんらも集結。大熊先生のミニ講演やシンポジウムもありました。

アテネフランセで開催された『阿賀に生きる』制作30周年記念イベント

 この映画は、ご存知の方も多いと思いますが、文字通り阿賀野川流域で暮らす3組の老夫婦の日常を捉えたものです。湿地帯の、重く植物の根が絡み合った土を耕し、昔ながらの稲作を続ける長谷川さん夫婦。この川をゆく舟のほとんどを造ってきた遠藤さんご夫婦。そして、餅つき名人の加藤さんご夫婦。70代後半から80代前半の、永く自然とともに暮らす主人公の顔、言葉、動きには、人間という動物の本質が凝縮されているようでした。

 それは、自然の恵みと厳しさを両方知ってその懐に抱かれるように生きているということ。そして、暮らしの中で人と人が団子のようにくっつき合って、それが他の生きものにも通じ、情となって通っていること。

大熊孝先生のミニ講演。科学者の視点を超えて生活者の視点、生きものとしての人間観に貫かれていました

 かつて阿賀野川で遡上してくる鮭を「鈎(かぎ)流し」と呼ばれる一本釣りで何尾も釣ったという長谷川さんが、飲みながら「鮭の母性っていうのはよう……」と話し始めるとき、それは隣にいる妻のことを話しているようでもあり、生きもの全般を語っているようでもあり……。そのうちにぱたりと眠ってしまうシーンが、いまも目の奥から離れません。というか、思い出されて仕方がないのです。

 かつては木舟造りの名人だった寡黙な職人、遠藤さんが、長いブランクを経て舟造りを教える決心をして、出来上がった舟が滑るように川をゆく様子を見た日の嬉しそうな目とわずかに綻ぶ口元。

 80歳を超えた加藤さんが杵を振り下ろす様子、つきたての餅を一気に運ぶ動きには、とても真似できないと目を見張ります。

 この映画を撮ったのは20代の若者たち。ほぼ素人の七人が家を借り、3年間住み込んで、その地の風を感じ、土の匂いを嗅ぎ、川音を聞き、地域に暮らす人々と食べ、話し、笑い、生活して創り上げた一本の映画。フィルムの時代、膨大な製作費を集めた委員会の代表を大熊先生が務め、1400人から3000万の寄附が集まり、足りない1000万は、ロバート・レッドフォードが代表を務める映画祭の賞金で見事に補填されたそうです。

 大熊先生のミニ講演での「川の定義」、深く心に刺さりました。

「川とは、山と海とを双方向に繋ぐ、地球における物質循環の重要な担い手であるとともに、人間にとって身近な自然で、恵みと災害という矛盾の中に、ゆっくりと時間をかけて、人の“こころ”と“からだ”をつくり、地域文化を育んできた存在である」

 遠藤さんがガラスが1枚空いたままの窓をそのままにして、そこからツルを伸ばして咲く朝顔を愛しそうに眺める姿は、人間の進むべき未来を示しているようです。

 彼らは皆「新潟水俣病」の患者、被害者でもありますが、それが声高に叫ばれることはありません。

 いまは亡き監督の佐藤真さんは、どんな想いで彼らを、川を、撮り続けたのか。

「この映画はね、100年生きるよ」と言われたそうですが、映画に刻まれたいのちの在り方は永遠だと思います。

百年後に生かすために、いまデジタル・リマスター版制作のためのカンパを募っていらっしゃるそうです。
詳しくは(有)カサマフィルム 代表 ⻑倉徳生さん e-mail: nagakura★kasamafilm.comまで(★を@に変えて送信してください)

 またまた長くなりました。金木犀が満開です。どうぞ、去り行く秋を、満喫してくださいね。

 どこかの会場でお目にかかれたら幸せです。

   2022.10.19 前田せつ子

 

矢野さんと、矢野さんの秘書、マネージャー、現場スタッフ……数えきれない役を務める岩田彦乃さん。二人の笑顔はいつも自然体
実家の金木犀もいまが満開

願いは地域に根を張っていくこと

 青梅から新潟、そして南会津へ。秋の旅は続いています。

 青梅にあるシネマネコは昨年オープンした木造のミニシアター。6月に上映してもらった時がちょうど1周年記念で、初の満席御礼となったことも重なって、スタッフの方も喜んでくださいました。その後、アンコール上映も決まり、その延長線上で企画されたのが、シネマ✖️ライヴ企画〜山口洋ライヴイベント『未来につなぐ青梅の杜』。

 音楽を担当してくださった山口洋さんが、『未来につなぐ青梅の杜』をテーマに寄せられた写真・動画とコラボレーション。『杜人』と青梅を音楽でつなぐ、という志が漲る特別なライヴが、圓城寺裕子さん、熊田路子さん、遠畑瑞枝さんの「チーム青梅」を実行委として秋分の日に開かれました。

 ライヴ中の写真はお届けできないのですが、リハーサルと終了後の写真から雰囲気だけでも味わってください。

映像はHEATWAVEの作品に長く携わってきたアート・ディレクターの渡辺太朗さんが担当。テーマ別に選んでつないで、本番では動的に表現

 

当日のギターはこの三本!
青梅らしい、でも、誰にとってもきっと懐かしい風景。ジーンとする
山口さんは写真から受けたインスピレーションを音楽に変え、その場の空気を震わせていく
満席のお客様からたくさんの拍手をいただいて、無事終了。上映は10/13まで続きます!

 一般の方から「青梅」限定でお寄せいただいた写真はどれも、上手い下手など関係なく想いが溢れ、胸を掴まれるものばかりでした。映画の後のライヴという長丁場でしたが、お客様からは「青梅の魅力を再発見した」「なぜか涙が止まらなかった」「見慣れた風景なのにとても愛おしかった。この風景を大切に残していかなければ」「胸がいっぱい。このまま持ち帰ります」などの声が聞こえてきました。

 一夜限り、青梅限定のライヴ・イベント。生のギターが生み出す波、渦は、確かにその場の空気を震わせ、心に風と光を通すものでした。

シネマネコ初のライヴとなりました

 さて、9月24日は新潟へ。高田世界館に続いて新潟県内で2館目の公開となるシネ・ウインド。

市民映画館という名の通り、市民に愛されていることが伝わるミニシアターでした
嬉しい満席の札!

 ここで公開してもらえるようになったのは、星野千佳さんをはじめとするまちの方々の熱い想いと働きかけのおかげだと思っています。星野さんは大地の再生の手法で砂防林の松林の改善作業を続けていらっしゃり、この日は一緒に活動されている地域の皆さんもたくさん観にきてくださいました。なんと、『阿賀に生きる』製作委員会代表も務められた新潟大学名誉教授河川工学の大熊孝教授もみえて、10月10日に都内で開催される『阿賀に生きる』公開から30年記念イベントのお知らせもいただきました。

 アフタートークでは、星野さんと新潟大学農学部の粟生田忠雄先生にご登壇いただき、土中環境、新潟という地域の特性についてのお話をいただきました。

「新潟は日本列島の背骨。新潟が変われば日本が変わる」

 矢野さんの言葉を満席のお客様に伝えられた星野さん、矢野さんとともにこれからもフィールドワークを行いつつ研究を続けられる粟生田先生に、満席の会場からたくさんの拍手がおくられました。

とてもあたたかい空気で包まれた客席には、宮大工の小川棟梁、大地の再生メンバー、佐藤俊さんのお母様も!
シネ・ウインドの井上さん、9/30までよろしくお願いいたします!
(写真右から)星野千佳さん、斑鳩建築の小川棟梁、粟生田先生、初めて新潟で大地の再生講座を開かれた大島さん。松林の改善活動に参加したい、と仰って帰られるお客様もいらっしゃいました!

 さて、新潟からローカル線で南会津へ。

 

稲刈りを待つ黄金の波
かつては清流で、鮎釣り客で賑わった水無川。護岸工事ですっかり表情を失ってしまったとか
戦後、農業、林業を学ぶ学校として建てられた校舎を移築した奥会津山村道場
シンボルツリーの巨大な楡の木。弱っているのが気になるけれど……

「南会津地域をひらく未来研究会」主催の上映会は会津田島駅からすぐのホールで。

 

郡山や那須塩原からも参加してくださいました
実行委の馬場浩さんは自然農の農業者で南会津町議。同じく実行委の湯田芳博さん、馬場さんのご家族の皆さん、お世話になりました!

 上映後のフリートークで印象に残ったのは、会場からのこんな声。

「こういう映画、都会ではいいかもしれないけれど、このあたりじゃ受けないんじゃないの? 店の軒先にはどこでも除草剤が売られてる。自然が多すぎて慣れてしまって、草は敵以外何物でもないんだから」

 発言されたのは、70代を過ぎて有機農業を始められた方。近い言葉を、屋久島に撮影に行った時にも聞きました。でも、除草剤を撒いていた通学路も、「僕らが(風の)草刈りしますから」という提案が通って変化の兆が見えてきていつとか。もともと住んでいる人の意識も、移住者の視点、意識で変わっていくこともある。同じものを別の角度から見ると、別の良さが見えてくる。良いも悪いも見方次第。

 上映会に集まってくださった方は、それぞれに自分の地域をよくしたいと思われている方ばかり。実行委の馬場さんも、長く周囲から「農薬も肥料も使わないなんて、うまくいくはずがない」と変わり者扱いされてきましたが、いま国は輸入肥料価格の高騰で有機栽培を奨励する方向に動いています。

 封切りから5ヶ月と10日。この間、舞台挨拶&トークに伺ったのは計34会場、68回。上映をきっかけに『杜人』の根が少しずつ、その地に張っていくのを感じています。

「大事なのは、『足るを知る』ではなく『足らざるを知る』なんです」。矢野さんの言葉ですが、だからこそ、循環が生まれ、いのちは息づいていく。ここから、視点が変わり、行動が変わっていくことを、心から願っています。

   2022年9月26日   前田せつ子

『杜人』の旅は始まったばかり

 もうすぐ封切りから5カ月が経ちます。全国の映画館や自主上映会場を訪れながら、人生でもなかなかないくらいの濃厚な時間を味わわせていただきました。

 昨日、こんなメールを富山の「ほとり座」という映画館からいただきました。

『杜人』上映では、鑑賞後にお客さまが声をかけてくださることが多く、作品に励まされてとてもうれしそうに、驚いたことやさまざまな気づきをいっしょうけんめいに話してくださいました。「いまとても晴れやかな気持ち」とおっしゃってくださったお客さまもいらっしゃいました。そうやってお客さまと交流していると、いつの間にか劇場ロビーの『杜人』掲示コーナー前は観賞後のお客さまが何人か集まって共鳴しあっている、作品はそんな時間ももたらしてくださいました。

 即決して4/16から上映してくださった大阪・第七藝術劇場さんからは、こんなお言葉を。

『杜人』の上映、改めましてありがとうございました。当初の想定以上のロングランとなり、作品の持つ力観られた方々の口コミの力を見ることができました。

 9/12からアンコール上映が始まっている鹿児島・ガーデンズシネマさんからも、こんなコメントをいただきました。

 大地の呼吸を取り戻す。すごい方がいらっしゃるなと思いました。映画を知ることで大地も人の世も風通しがよくなり、生きやすい世の中になってくれればと願うばかりです。

 映画館の方がこんなふうに捉えてくださったこと、心からありがたい気持ちでいっぱいです。何より、映画が人と人、人と地域をつなぐ役割を果たしてくれていることが嬉しいです。

 自主上映会を開催してくださった方からは、こんな感想がシェアされていました。

「矢野さんは、すべてが渦として見えて、感じている方なのだと思うけど、この映画も大きな渦を作ってるなと思ったのでした。それにチョイ関われて、ホントによかったですよ。みなさんも主催者になれますので!」

「『杜人』によって伝えられたもの、私たちも身の回りから小さな変革を。種子はあちこちに蒔かれた。私たちもそれぞれの歩みを見つけよう、つづけよう」

「大きくてたくさんの人を対象にしたイベントではなく、小さく、より深く学び会えるイベントにしたい、と実行委員で何度も話し合って創りあげてきた。今、私たちに出来ることを、掴んだ瞬間」

 客観から主観に。客体から主体に。他人事から自分事に。人を繋ぎ、地域に根差してはじめて『杜人』は息をしていく。そのことを、しみじみ実感しています。

 主催者になることは、そこに自ら種を播くこと。実行委同士が繋がり、集まってくださった方々と話し、地域のことを考えることは、その種に水をやり、育てていくことです。ちょっと勇気を出して、小さな上映会を地元で開いてください。きっと、見えてくる風景が変わっていくと思います。

「杜人」の旅は、その名の通り、草の根の運動。是非、一緒に育てていただけると嬉しいです。

     2022.9.13 前田せつ子

  

111歳! 日本最古の映画館、高田世界館でも現在上映中!
若き支配人、上野さん
ナナゲイさんを訪れる日がまた来ますように
Morc阿佐ヶ谷、上映中です!
こんなにお洒落なロビー!
9/4、満席の横浜歴史博物館
東村山での上映会も140席が満席に。実行委の皆さん、ありがとうございます!
稲穂も稔ってきました。まだまだ旅は続きます!

地域密着型イベント「未来へつなぐ青梅の杜」

 各地でアンコール上映が決定していますが、9月になると引き続きのCINEMA AMIGOに加えて、鹿児島ガーデンズシネマ、青梅シネマネコ、山口情報芸術センターでの再上映がスタートします。

 青梅では、シネマネコでのアンコール上映に合わせて、地元の応援団“チーム青梅”が独自イベントを企画。
 題して「シネマ×ライヴ企画 山口洋ライヴイベント『未来につなぐ青梅の杜』」。

 地域✖️映画✖️ライヴの地域住民参加型のイベント、是非チェックしてみてください。

 (以下、主催者からのお知らせを転載します)

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「杜人」のサウンドトラックを手掛けた山口洋氏(HEATWAVE)が、特別企画として、青梅の映像に合わせてギターを生演奏する、音楽(山口洋)と映像(青梅)のコラボレーション。

「未来へつなぐ青梅の杜」をテーマ に、映像と音楽が響き合うことで広がる無限の世界を体験できる貴重なライヴです。 そこで、青梅の自然やそこに生きる人々を撮った写真や動画を大募集。 青梅は、東京にあって自然に恵まれた環境で、古き良き時代の面影が残る町並みや、人々のつながりが残る町。写真や動画を 募集することで、地元の人にとっても、日々大切にしている美しい風景を多くの人と共有できたり、当たり前すぎて気に留めなかった 青梅の良さに気付いたり、地域を見直すきっかけともなるでしょう。 市民参加型で、青梅の杜を探し、地域の宝を未来へ残していくためのアクションへとつなげます。 後半は、前田せつ子監督も参加して、山口洋氏との息の合ったフリートークを展開します。
「未来へつなぐ青梅の杜」ライヴに青梅の写真、動画を大募集!

「未来へつなぐ青梅の杜」をテーマとした写真、動画を募集します。あなたの周りにある、未来につなげていきたい、 大切に守っていきたい、元気を取り戻してもらいたい、そんな思いを込めた写真や動画をお送りください。

【募集要項】
1 動画は 3 分以内、mov か mp3 ファイルでお願いします。1GB 以下。音楽・音声は載せないこと。

2 写真は何点でもご応募できます。jpg/jpeg データでお願いします。10MB 以下。
こちらで、スライドショーのように他の作品と合わせて編集することをご了承ください。

3 撮影対象物は、テーマに即した青梅市内の風景、建物、人、動物、植物等。

4 ご応募に際しては、被写体の使用許諾をいただいた上でご応募ください。

5 撮影場所は青梅市内限定とさせていただきます。

6 応募者は青梅市民以外の方もご応募いただけます。7 お名前、メールアドレス、撮影場所をご記入の上、以下の宛先までご応募ください。
データが大きい場合はファイル転送サービス等をご利用ください。
【応募先】 omenomori⭐︎gmail.com(⭐︎を@に変えてください)
【応募締切】9 月 10 日(土)23:59 まで
【発表場所】9 月 23 日(金・祝)にシネマネコで行われる山口洋さんのライヴイベントで、山口さんの生演奏とともに シネマネコのスクリーンで上映されます。ご覧いただくには「杜人」特別鑑賞チケットが必要になります。 ※ご応募いただいた方全員の作品が上映できない可能性もあります。

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【シネマ×ライヴ企画 山口洋ライヴイベント「未来につなぐ青梅の杜」】

■日時:9 月 23 日(金・祝)16:00~17:41映画上映、18:00~ライヴイベント(前田監督とのトーク含む 2 部構成)

■場所:シネマネコ(東京都青梅市西分町 3 丁目 123)
■料金:特別鑑賞チケット 3900 円(映画鑑賞チケット及びライヴ鑑賞チケット含む、1 ドリンク付き)
■予約開始日:9 月 1 日(木)から申込受付開始。

■予約方法:9 月 1 日(木)以降、以下の URL よりお申し込みください。

https://omenomori0923.peatix.com 

■お問い合わせ先:omenomori⭐︎gmai.com(⭐︎を@に変えてください)

※映画鑑賞チケットのみ、ライヴ鑑賞チケットのみの販売はございません。 ※座席指定はできません。お申し込み順に前列から順の座席となりますのでご了承ください。 ※座席番号は、当日、上映の 40 分前より配布いたします。