ユニバーサル・シアターを全国に!

 7月に入りました。体温を超える暑さに地面に近い子どもたちの体調のケアが叫ばれています。小さな動物たちも同じ。政府からの指示を待つのではなく、五感を使って自分の身体も他者の身体も気遣いたいです。

 さて、昨日から都内にある「日本で一番小さい映画館」で上映がスタートしました!

このラインナップに気骨を感じます!
「チュプキ」はアイヌ語。意味は調べてみてください。そしてMotion Galleryのクラファン、覗いてみてくだいね!

 ここは小さいだけではありません。なんと、日本初のユニバーサル・シアターなんです。つまり、「日本で一番優しい映画館」。

 独自に字幕と音声ガイドを付けてくださって、料金は一般で1500円。予約はサイトや電話ですが、支払いは当日なので、突然具合が悪くなったときはキャンセルもできます。しかも、キャンセル待ちを受け付けていて、その方々に順番に連絡メールが行くという細やかさ。

 昨日は20名の定員いっぱい。キャンセル待ちの方もたくさんいらしたとか。そのキャンセル待ちが前日に叶って、かつて専門学校で音楽ライターコースの講師をしていた頃の教え子も観にきてくれました。

 18分と限られた時間のトーク。まず「なぜ、この映画を撮ったのか」を話したら9分が経過してしまい、その後慌てて残りの時間、お客様からの質問を受けました。

 原発も再生可能エネルギーもダメだと思うけれど、どうしたらいいか?

 学校の校庭の木が弱っていく。自然を相手にすると管理する大人の中にも対立が生まれかねない。どうしたら?

 簡単には答えられない質問ですが、二者択一じゃなく、また、対立構造でなく、新たな方向性を見出していくしかないと話しながら思いました。

 電気が足りないから原発回帰ではなく、森林を伐採してメガソーラーを張り巡らすのでもなく、循環を生み出すことで短絡的な思考からはみ出していく。駐車場のアスファルトを有機アスファルトに変えたり、コンクリートの際に溝や穴を掘ることで天然のラジエーター機能が回復することを五感で確認していきたい。

 そもそも、自然界は見事な循環で成り立っているのに、事を複雑に、歪にしたのは人間。人間同士の対立は循環にはつながらない。いい悪い、のどちらかに立つのではなく、どちらも足りない、という前提で、足りないところを補い合う社会になれば……。

 そう話したのかどうか、はっきり覚えていませんが、そんなふうに知恵を絞り合う時間こそが大切、と思えるひとときでした。

代表の平塚さんに音声ガイドや字幕をつけてくださった方、スタッフの皆様。めちゃくちゃ皆さん優しくてびっくり!
何度見ても痺れる「ハンナ・アーレント」のポスター。「すべての悪は凡庸である」。「ありがとう岩波ホール」特集で上映されます!

 上映館のない地域では自主上映会がスタートしている「杜人」ですが、バリアフリー対応の素材ってありますか?とご質問をいただくことも。館の方に尋ねてみたら、「もちろん、お貸し出しします! せっかくつくったので、是非使ってください!」とのお返事。ありがたいです!

 

渾身のチョークアートが入り口の前に! 朝までかかって描かれたのだとか

 さて、夜はもう一つ、鹿児島のガーデンズシネマのオンライントーク。初めてのオンライン、正直躊躇いましたが、結果的には私が元気をいただきました!

 ガーデンズシネマという39席のミニシアターが、どれほど地域に必要とされているかがダイレクトに伝わってきて、次の機会があったら是非リアルに訪れたいと思いました。

 やはり、最初に撮った理由を話していたら、あっという間に10分くらい経ってしまったのですが、あたたかい拍手をいただいて距離を超えて心が解けました。

 最初に質問してくださったのは、なんとテンダーさん! 数年前、アースデイ永田町でお会いして、その後、世田谷「羽根木の家」のテンダー講座に参加したことがある、大尊敬する自由自立人。羽根木の家はピアノ曲を提供してくださった水城ゆうさんが家主で主宰をされていた場所。一気に時が円環を描いた気がしました。

「矢野さんたちが大地の再生をする速度より大地を固める速度の方が早くて、追いつかないのでは?」という質問には、「小さな一手が大きな変化につながる。目の前の大地に移植ゴテで5cm穴を開ければ、それは長いホースの先が詰まっていたのが解消されるのと同じように、一気に山の尾根まで伝わって、一瞬で空気と水は流れ出す。人が2割、3割やれば後は自然がやってくれると矢野さんはいつも仰っている。厚いコンクリートの下でも、大地は死んではいない。グライ土壌も陽の光を浴びて酸素に触れれば肥沃な土壌に変わる。絶望している暇はない」と伝えました(たぶん)。

 

 さあ、今日はこれから長野県上田市にある100歳を超える映画館、「上田映劇」初日。「大地の再生関東甲信越」の赤尾和治さんと一緒にアフタートークです。

 行ってきます!

     2022.7.2 前田せつ子