封切りからひと月ちょっと。いま思うこと

 思えば、昨秋Motion Galleryで行ったクラウドファンディングが、最初でした。2021年9月18日の前、2週間近く、ずっと「どうやって想いを伝えるか」に格闘していました。なぜ、応援してほしいのか。それをきちんと言葉で伝える。雑誌で記事を書く仕事はしていたものの、自分の想いをとことん書くのは初めての経験だった気がします。

 書いた文章は1万字を軽く超え、読んでもらった方からは「長い! 半分にできないの?」とも言われましたが、紙媒体ならともかくWEBなんだから! 削るところなんてひとかけらもないんだから! と強引にそのまま載せることにしたのがリリース3日前。

 クラファンはスタートダッシュが肝心、と言われ、大地の再生の支部の方々、応援してくださる方には事前にお知らせして、その時を待ちました。リターン品もショールや手ぬぐい、パンフレットやDVDなど選び抜いた品を用意して、気分はセレクトショップを新規開店する前の高揚感と若干の不安でいっぱいに。

 そして、オープン初日。その日に目標額を達成し、その後、英語字幕をつけて国際版をつくる、子どもたちにわかるチルドレンズ・エディションをつくる、という二つの目標も達成して、当初の目標の495%、379名の方の応援をいただいてプロジェクトは終了しました。名もなき人たちでつくった映画を、こんなにたくさんの方が応援してくださったことが本当にありがたく、嬉しく、もったいない気持ちでいっぱいになりました。

 とはいえ、映画として出ていく以上、もっともっとたくさんの方に観てもらわなければならない。だとしたら、この379名の方には応援団、プロモーターになっていただかなくては。そこでMotion Galleryのプロジェクトでの呼びかけはもちろん、fbでチラシを撒いてくださる方を募ったり、大地の再生各支部の方にお願いしたり、友人・知人に声をかけたり、口コミで広めていただくお願いをしました。

 さすがに配給・宣伝までやるとは思ってもいませんでしたが、いまドキュメンタリー作品は続々と生まれていて、力のある配給・宣伝会社は何ヶ月も先の公開まで予定がギッシリ。やむなく、封切り館のアップリンクさんや制作スーパーバイザーの纐纈監督や、配給会社に勤め始めたかつてのワークショップ仲間に教えてもらいながら、やることに。

 正直、封切り直前の1ヶ月はやることがあり過ぎて一日一日が真剣勝負。公開直前に完成した「杜人ガイドブック」(編集=私、レイアウト=娘、の完全家内制手工業!)を特別鑑賞券とともにクラファン支援者の方に無事送ることができたときには、どれほど肩の荷が降りたことか。さらに、新聞などのメディアに取り上げてもらうお願いをしたり、知り合いという知り合いにお願いメールを送ったり、犬の散歩で会話を交わした方にチラシを渡したり、「封切りまでもう少しですね。ワクワクしますね!」と言われても、ワクワクなんてしているヒマはない!と叫びそうになる日々でした。

 結局、地方版への掲載はあっても、全国紙に取り上げてもらうことはなく、メジャーな媒体とは無縁で、行き届かない告知に不安を抱えたまま公開初日を迎えることに。最初の3日間はトークショーも組んで、満員御礼を目指しましたが、4日目以降はどういう方が観にきてくださるか、くださらないか、まったくわからない状況でのスタートでした。ところが……。

 その後のことは、これまでも書いたように、奇跡かしらと思うことの連続でした。

 アップリンク吉祥寺の劇場担当の方には「こんなに満席になるのって、『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞でニュースになったとき以来。その前は……ちょっと思い出せないです」と言っていただいたり(ちなみにアップリンク吉祥寺では一番大きいスクリーンで10回近く満席を記録)。物販担当の方は「こんなにパンフレットの購入に長蛇の列ができるのなんて初めてです」と驚かれたり(ちなみに、「杜人ガイドブック」は1000冊、サウンドトラックCDは240枚納品)。当初2週間の予定だった上映期間は、現在5週目に入っています(5月26日終映予定)。

 ほか、大阪・第七藝術劇場、アップリンク京都、横浜シネマ・ジャック&ベティでロングラン、5月8日には岡山・円結(まるむすび)さんでプレイベント、13日からは本上映が始まり、14日からは川崎市アートセンターで、15日からは逗子・シネマアミーゴさんで上映が始まりました。いずれも初日は満席御礼となりました。

川崎市アートセンター アルテリオ映像館で。佐藤俊さんと一緒にアフタートーク!
逗子にある海辺のお洒落なミニシアター、シネマアミーゴでは鶴田真由さんと対談を

 

 何より嬉しいのは、観てくださった方の多くが「自分事」として真剣に受け止めてくださっていること。造園に限らず、ご自身の人間関係、生き方に重ねて、あるいは大きな視野で人類の課題として捉えてくださっていることです。そして、それを誰かに伝えてくださっていること。身近な方、ご友人に直接、あるいはSNSで顔の見えない誰かに。

 二度、三度と足を運んでくださる方も多く、ご友人やご両親、お子さんと一緒にいらしてくださる方も。何の予備知識もなく「今日は映画を観よう!」と観にいらして、パンフレットまで購入され、サインを求めてくださった方もいらっしゃいました。

 大手メディアでの宣伝など全くしなかった(できなかった)のに、お一人お一人の発信で広まって、映画館も増え、現在30館で上映が決まりました。小学館の老舗アウトドア雑誌「BE-PAL」は、4月15日に行った矢野智徳さんのお話会2回に分けて詳細に載せてくださっています。私の森.jpgreenz.jpという環境をしっかり捉えたメディアでも紹介してくださり、その記事には強い想いが込められて読み応えたっぷりです。

 また、ランドスケープ・デザイナーであり、「コミュニティデザイン」という概念の日本における第一人者でもある山崎亮さんが、ご自身のYouTubeチャンネルでこんな発信をしてくださったり

 さらに、番組スタッフさんの推薦でラジオ*bayFM/THE FLINTSTONE→6/5(日)夜8:00〜放送も決まりました。すでに収録(リモート)は終わっており、正直、穴があったら入りたい気分ではありますが、千葉県を中心に関東地域、radikoでは全国で聴けますので、よろしくお願いいたします。

 

 クラファンでご支援をいただいた方への御礼のメッセージに、最後に添えていた言葉があります。

 初心者の拙い映画ですが、どうか、届くものがありますように。

 そして、願わくば、この映画が小さな種籾となり、あちこちで杜人の芽がふいて、人間だけが自然の調和を邪魔することなく、人と植物、虫や鳥、動物たち、生きとし生けるすべてのものがこの地球を生きる仲間として、支え合い、補い合う世界に、わずかでも近づきますように。

 それはきっと人間にとっても生きやすい世界だと信じています。

 映画の成功は目的ではありません。矢野さんの言葉を借りれば「同じ生きもの同士、わかり合える」世界へ、少しでも近づきますように。これからも、草の根が見えないところへ柔らかい根を伸ばしていけますように。

 非力だからこそ、足りていないからこそ、差し伸べられる手があって、補い合うことで循環が生まれ、バランスが保たれていく。それを実感する日々です。どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。

       2022年5月17日 前田せつ子 

封切りの日、家に戻ると届いていた御花。会社員だった頃の後輩で、四半世紀に及ぶ友からの

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