願いは地域に根を張っていくこと
青梅から新潟、そして南会津へ。秋の旅は続いています。
青梅にあるシネマネコは昨年オープンした木造のミニシアター。6月に上映してもらった時がちょうど1周年記念で、初の満席御礼となったことも重なって、スタッフの方も喜んでくださいました。その後、アンコール上映も決まり、その延長線上で企画されたのが、シネマ✖️ライヴ企画〜山口洋ライヴイベント『未来につなぐ青梅の杜』。
音楽を担当してくださった山口洋さんが、『未来につなぐ青梅の杜』をテーマに寄せられた写真・動画とコラボレーション。『杜人』と青梅を音楽でつなぐ、という志が漲る特別なライヴが、圓城寺裕子さん、熊田路子さん、遠畑瑞枝さんの「チーム青梅」を実行委として秋分の日に開かれました。
ライヴ中の写真はお届けできないのですが、リハーサルと終了後の写真から雰囲気だけでも味わってください。
一般の方から「青梅」限定でお寄せいただいた写真はどれも、上手い下手など関係なく想いが溢れ、胸を掴まれるものばかりでした。映画の後のライヴという長丁場でしたが、お客様からは「青梅の魅力を再発見した」「なぜか涙が止まらなかった」「見慣れた風景なのにとても愛おしかった。この風景を大切に残していかなければ」「胸がいっぱい。このまま持ち帰ります」などの声が聞こえてきました。
一夜限り、青梅限定のライヴ・イベント。生のギターが生み出す波、渦は、確かにその場の空気を震わせ、心に風と光を通すものでした。
さて、9月24日は新潟へ。高田世界館に続いて新潟県内で2館目の公開となるシネ・ウインド。
ここで公開してもらえるようになったのは、星野千佳さんをはじめとするまちの方々の熱い想いと働きかけのおかげだと思っています。星野さんは大地の再生の手法で砂防林の松林の改善作業を続けていらっしゃり、この日は一緒に活動されている地域の皆さんもたくさん観にきてくださいました。なんと、『阿賀に生きる』製作委員会代表も務められた新潟大学名誉教授河川工学の大熊孝教授もみえて、10月10日に都内で開催される『阿賀に生きる』公開から30年記念イベントのお知らせもいただきました。
アフタートークでは、星野さんと新潟大学農学部の粟生田忠雄先生にご登壇いただき、土中環境、新潟という地域の特性についてのお話をいただきました。
「新潟は日本列島の背骨。新潟が変われば日本が変わる」
矢野さんの言葉を満席のお客様に伝えられた星野さん、矢野さんとともにこれからもフィールドワークを行いつつ研究を続けられる粟生田先生に、満席の会場からたくさんの拍手がおくられました。
さて、新潟からローカル線で南会津へ。
「南会津地域をひらく未来研究会」主催の上映会は会津田島駅からすぐのホールで。
上映後のフリートークで印象に残ったのは、会場からのこんな声。
「こういう映画、都会ではいいかもしれないけれど、このあたりじゃ受けないんじゃないの? 店の軒先にはどこでも除草剤が売られてる。自然が多すぎて慣れてしまって、草は敵以外何物でもないんだから」
発言されたのは、70代を過ぎて有機農業を始められた方。近い言葉を、屋久島に撮影に行った時にも聞きました。でも、除草剤を撒いていた通学路も、「僕らが(風の)草刈りしますから」という提案が通って変化の兆が見えてきていつとか。もともと住んでいる人の意識も、移住者の視点、意識で変わっていくこともある。同じものを別の角度から見ると、別の良さが見えてくる。良いも悪いも見方次第。
上映会に集まってくださった方は、それぞれに自分の地域をよくしたいと思われている方ばかり。実行委の馬場さんも、長く周囲から「農薬も肥料も使わないなんて、うまくいくはずがない」と変わり者扱いされてきましたが、いま国は輸入肥料価格の高騰で有機栽培を奨励する方向に動いています。
封切りから5ヶ月と10日。この間、舞台挨拶&トークに伺ったのは計34会場、68回。上映をきっかけに『杜人』の根が少しずつ、その地に張っていくのを感じています。
「大事なのは、『足るを知る』ではなく『足らざるを知る』なんです」。矢野さんの言葉ですが、だからこそ、循環が生まれ、いのちは息づいていく。ここから、視点が変わり、行動が変わっていくことを、心から願っています。
2022年9月26日 前田せつ子
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