矢野智徳さん舞台挨拶@横浜シネマ・ジャック&ベティ

 2022年4月23日、横浜シネマ・ジャック&ベティ公開初日。

矢野智徳さんのアフタートーク付きの回は満席、補助席が出るほど盛況で終わりました。心より御礼申し上げます。

 矢野さんのお話の書き起こしをしてくださった方があるので、シェアします。

ーー「映画を撮らせて」と言われた時どう思いましたか?

矢野:あまり私は人前に出ることはありませんで、現場ばかり動き回っていました。小さい時から人前に出るのは苦手なほうで、苦手を改善しようと思って生徒会をやったことはありますが……意を決して。そうやっても、もともとあまり表は好きな方ではないので、前田さんに言われた時、気は乗らないけど、前田さんの熱意、想いを断る理由はない気はして、「大変でしょうけど、よかったらお願いします」と。どこまでやってもらえるかわからなかったけど、前田さんも僕も同じ方向を向いているのはわかっていたので。成り行きだなと。一緒に時間を刻んでいく、伝えていくというのは必要だと思ってら、「ぜひお願いします」と言いました。

ーー植物の声が聞こえているのですが?

矢野:正直言って聞こえはしません。聞こえるという方にお会いしたことはあります。けど、僕自身は聞こえない。ただ、映像の福聚寺の桜や仙台の桜を治療してるとき、声は聞こえないけど、嫌われてはいないだろうなと。同じ動物として、苦しんでいる時、痛むようなことをやっているのではなく、息ができやすいことをやってくれているのが、生き物としてわかると思います。桜の花が咲いている時、冬の雪の中で枝が体に触っていると「誰が触ってるのかな?」と振り向くと、動物じゃなく植物の枝が体を撫でていたことがありました。そういう時、「あぁ、喜んでるかも。よくやってるって言ってくれている」と、そういう気持ちになれる。お互い様だなというか。夜中まで大変な作業をそうやってやってると、同じ生き物同士、わかり合える、通ずるものはあるな、という実感はあります。

ーー「仕事ではできない」と言われていましたが、矢野さんにとって造園業とは?

矢野:生業というのは、数字的な突き合わせじゃなくて、生きる業、生かす業として、生き物同士の業とも言えます。生業を踏まえていくということは、損得ではなくて、生き物同士、いのちの世界、いのちを通して関わるものだと思います。造園を通して生き物の世界と関わると、生業とはいい言葉だなと。おそらく昔の人がそういう方向の言葉として編み出したのだと。責任もある、損得だけじゃない。「業ってこういう世界だな」と現場で体感させられます。生業は、いい言葉、いい世界、それを背負えた時、やれてるなという実感がある。そういう世界だと思います。

ーー次の世代へのバトンタッチということで、これからやってみたいことはありますか?

矢野:映画にもあったように、中学1年の頃、同級生と話していました。「人と自然をつなぐ仕事」をしたい、と。この歳になっても、ずっとそのまま来ちゃったなっていう思いがあるので、ずっとそのまま走っていくんだなと(笑)。やれる範囲で自分の山登りができればと思っています。